
要町駅から徒歩数分。静かな住宅街の角にひっそり現れる「中華そば しながわ」。暖簾をくぐると、カウンターのみの小さな店内には澄んだスープの香りがふわっと漂ってくる。お昼どきにはすでに数人の行列ができており、期待値は高まるばかり。今回は看板メニューの「中華そば」を注文した。
席につき、湯気をたてながら届いた一杯は、まさに美しい。透明感のある淡い琥珀色のスープに、整然と並んだ麺、そしてチャーシュー、メンマ、ネギの彩り。レンゲを入れる前から、香りで「この店は間違いない」と確信した。
まずはスープを一口。驚くほど澄んでいるのに、しっかりとした深みがある。鶏ガラをベースにした清湯系で、口に含むと鶏油のやわらかなコクと、節系の優しい旨みが広がる。塩気は控えめで、素材の出汁そのものの力で勝負している印象だ。これがしながわの“らしさ”なのだろう。
次に中太のストレート麺をすする。ツルッとした喉越しが心地よく、スープとの一体感が素晴らしい。噛むたびに小麦の香りが立ち、麺自体の風味がしっかりしている。後半になるほどスープを吸ってまろやかになり、飲み干したくなるタイプの一杯だ。
チャーシューは肩ロースが2枚。低温調理されたピンク色の断面が美しく、箸で持つとほろっと崩れる。脂が甘く、肉の旨みがじんわりと広がる。メンマは細くて柔らかく、全体のバランスを邪魔しない。ネギのシャキシャキ感が最後まで飽きさせないアクセントになっている。
他にも「塩そば」「つけそば」「限定」などのメニューがあり、常連らしきお客さんは迷わず“限定”を頼んでいた。隣で食べていた人のどんぶりには、鶏白湯ベースらしき濃厚なスープ。次はあれを試してみたいと思った。
店内は白木のカウンターが清潔に保たれ、厨房の動きが見えるライブ感がある。ご主人の所作はとても丁寧で、器の縁を拭く姿に職人の誇りを感じた。席間もゆったりしていて、静かに味わう時間が流れる。
接客は控えめながらも温かい。食券を渡すと短く「ありがとうございます」と笑顔で返してくれる。気取らず、押しつけがましくない距離感が心地いい。
全体として、奇をてらわず、純粋に“中華そば”というジャンルの真髄を味わえる一杯だった。派手な演出もなく、スープ・麺・具材すべてが調和している。ラーメンというより「料理」と呼びたくなる完成度。レビューとして伝えるなら、「素材の力と職人の丁寧さが生んだ静かな名作」。要町に来たなら、間違いなく足を運ぶ価値がある。
帰り際、ふと振り返ると、暖簾が風に揺れていた。その瞬間、「また食べに来よう」と自然に思えた。季節が変わるごとに、きっと少しずつ表情の違うスープに出会えるはずだ。
| 電話番号 | 03-5926-6178 |
| 営業時間 | 7:00-9:00 金、土、日、祝11:00~15:00、18:00~22:00 |
| 定休日 | 無休 |
| 住所 | 東京都豊島区西池袋4-19-14 |
| ホームページ | https://twitter.com/shinachuu |