




炭火焼干物食堂 越後屋 八十吉は、東銀座の喧騒を抜けて暖簾をくぐると、もうそこは香ばしい炭火の世界。入口付近から漂う焼き魚の香りに、思わず空腹感が増幅してしまう。今回注文したのは、干物串おまかせ5本、しまほっけ味噌漬け、肉巻き生姜、そして真いか一夜干し。どれも看板メニューといえる存在感だ。
干物串は、鯖や鰯、銀鱈などその日のおすすめが串に刺さり、炭火でじっくり火を入れられていた。パリッとした皮をかじると、中からあふれ出す脂と旨みの甘さ。干物特有の濃密な塩気があるのに、それがとても優しい輪郭で、魚の奥行きをじんわり引き立てる。特に銀鱈の串は脂がとろけて、塩と炭の香りが絡み合う至福の一口だった。
しまほっけ味噌漬けは、大判で身が分厚く、箸を入れるたびにふわっと湯気が立つ。味噌の香ばしさが炭火でさらに深みを増し、ほっけの脂と一体になってどこか優しい甘辛さ。味噌漬けなのに重たくない。口に含むと「これだよ、これ…」と唸ってしまうほど心が緩む味わい。
肉巻き生姜も面白い一品。干物のお供というより、これ自体が主役級の存在感。カリっとした表面に噛むと、中の生姜がキュッと爽やかな辛味を放って肉の旨みを引き締める。箸休めになるようで、もう一口、もう一口と止まらなくなる危険な美味しさ。
真いか一夜干しは、柔らかさと弾力のバランスが絶妙。干し過ぎていないので水分もほどよく残り、噛むたびに旨みがじゅわっと広がる。炭火の香りも穏やかで、イカ本来の甘さを一層引き立てていた。
店内は木目が基調の落ち着いた空間で、カウンターに座ると目の前で職人さんが黙々と焼いてくれる。炭火の台を眺めながら待つ時間も心地よい。席はテーブルとカウンターがほどよく配置されていて、一人でも数人でも居心地がいい。スタッフの接客はさっぱりしつつ親切。おすすめの食べ方や部位を丁寧に教えてくれたのが嬉しかった。
客層は近所の常連さんから仕事帰りのサラリーマン、観光客まで幅広い。どの人も炭火を囲んで美味しそうに頬張っていて、同じ時間を共有する一体感があった。
何より、このお店で特に嬉しかったのは、干物の「濃いけど重たくない旨み」を存分に味わえたこと。干物のレビューは何度も書いてきたが、越後屋 八十吉は特に素材の力強さと炭火の絶妙さのバランスが秀逸だと感じた。また違う串や焼き魚も食べに来たい。
| 電話番号 | |
| 営業時間 |
11:00 - 23:00 |
| 定休日 | |
| 住所 | 東京都中央区銀座4-13-11 |
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